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安全運転
2022.02.05 (土)
社用車の事故が発生した際は現場の安全確保や負傷者の救護が最優先です。
当事者を含め、管理者も冷静な対処が求められます。また、企業は社用車の事故に対してその責任を負わなければなりません。
この記事では社用車の事故の対応方法と、企業が気を付けるポイントを解説します。
社用車による事故はいつ、どこで発生するか予測がつきません。
突然の事故対応で現場がパニックに陥ってしまうことも考えられます。万が一にも事故が発生してしまった場合は、事故現場の対応を優先しつつ落ち着いて対処することが重要です。
今回は社用車で事故が発生した際に気を付けるべきポイントを紹介します。
合わせて社用車の事故における責任の考え方も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
従業員が社用車で事故を起こしてしまったときの基本対応について解説します。
社用車であっても事故の一時対応は通常の交通事故と変わりません。
適切な対応ができるよう、あらかじめ事故対応マニュアルを車載しておくとよいでしょう。
事故を起こしてしまった場合、当事者が初めに行うことは安全の確保と被害状況の確認です。
これを怠り現場から走り去ってしまうと「ひき逃げ」や「当て逃げ」となり重い刑罰が科されてしまいます。
事故後、車が自走可能な状態であれば安全な路肩に移動して停車しましょう。
その後、事故の被害状況を確認し、負傷者がいる場合は救護活動を優先します。二次被害を防ぐため、散らばったパーツを片付ける、発煙筒や三角表示板で後続車に注意を促すといった行動も重要です。
負傷者がいる場合は車を停車させてすぐに怪我の状況を確認しましょう。
怪我の程度に関わらず体に異常が見られれば119番通報をするべきです。事故発生直後は精神的な動揺もあり正常に痛みを感じられない場合もあります。
負傷者の意識がなく、呼吸・心配が停止している状態であれば救護活動が必要です。
近くにAED装置が設置されていないか確認しましょう。AED装置が見当たらない場合は人工呼吸や心臓マッサージで応急処置を試みます。
現場の安全確保と救急への通報を済ませた後は早急に警察へ連絡(110番通報)しましょう。
事故の過失割合を決めるためにも警察による現場検証は欠かせません。保険手続きを実施するためにも警察が発行する「交通事故証明書」が必要です。
なお、社用車の事故では当事者である従業員が示談を持ち掛けることがあってはなりません。
事故を隠蔽しようと自力での解決を試みる当事者もいますが、被害者がいる以上は企業として真摯に対応する必要があります。
適正な手続きを踏むためにも警察への届け出が必要です。
警察への連絡まで済ませたら相手方の情報をできる限り記録しておきます。
お互いに意識がある場合は氏名や連絡先、勤め先などの情報を交換しましょう。現場の状況写真も残しておけば会社への報告や事務手続きもスムーズに進めることができます。
なお、軽微な事故の場合は「急いでいるから」という理由で相手方が現場検証を拒むケースもあります。
その場合でも相手の連絡先や車のナンバーを控えさせてもらい、必要に応じて連絡が取れるようにすることが重要です。
自社への報告は現場対応の合間で行いましょう。
事故の当事者が優先すべきは現場の安全確保、そして怪我人の救護です。自社への報告はこれらを済ませた後でも構いません。
もちろん事故当事者が1人での対応に不安を感じるようであれば応援を要請するのもよいでしょう。大事なことは決してパニックにならず、優先順位を意識して行動することです。
社用車の事故における責任の考え方について解説します。
従業員が社用車で交通事故を起こした場合、雇用主である企業も賠償責任を負わなければなりません。社用車の事故では企業に対し「使用者責任」と「運転供用者責任」が発生するためです。
企業は、自社の従業員が業務の範囲内で第三者に損害を発生させた場合、従業員と共にその賠償責任を負う義務があります。
これが民法上の「使用者責任」です。法令では以下ように規定されます。
“ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。”
社用車の使用は業務の一部ですので、企業は事故の被害者に対して賠償責任を負わなければなりません。また、社用車での通勤途中に事故を起こした場合でも、通勤退勤は業務の延長と考えられるため使用者責任が発生します。
なお、事故当事者が業務執行中であるかどうかの判断は実質ではなく外形的です。
例えば、休日に業務外で社用車を運転した場合でも、車に企業ロゴ等が掲載されていれば業務執行中と判断される可能性があります。
営利活動のために車を所有している事業者は、その車が起こした事故の損害に対して賠償責任を負う義務があります。
これが自動車損害賠償保障法に基づく「運行供用者責任」です。法令では上以下のように規定されています。
“自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。”
なお、運行供用者責任が発生するのは「利益のために車を運航している場合」に限られます。
従業員が「業務時間外」に「無断」で社用車を運転した場合は営利活動とは認められないため、運行供用者責任も発生しません。
社用車の事故は企業と従業員の連帯責任です。
使用者責任や運行供用者責任が発生したからと言って、従業員の責任が免除されるわけではありません。
企業が全ての賠償責任を負うことが一般的ですが、必要に応じて企業から従業員に賠償金を請求することも可能です。
ただし、被害者の立場からすると事故を起こしたのはあくまで企業であると認識されます。不誠実な対応をすれば企業イメージを傷付けてしまうこともあるでしょう。
事故対応全般について企業がしっかりと責任を負い、被害者の対応にあたることが求められます。
社用車で事故を起こした場合でも、事故の当事者は道路交通法上の罰則を受けなければなりません。罰金や違反点数の加算は運転者本人に科されます。
なお、業務中の違反に対する罰金を会社が負担するかどうかは各企業の判断に任されます。配送業では駐車禁止違反の罰金は会社が負担するケースも多いようです。
企業が社用車の事故で気を付けるべきポイントは以下の3つです。
1、事故現場の対応を最優先に行動する
2、事故の賠償について社内規定を設けてはならない
3、事故を理由に解雇は出来ない
それぞれのポイントについて解説します。
事故を起こした当事者が優先すべきは事故現場の対応です。
特に負傷者がいる場合は適切かつ迅速な対応が求められます。しかし、人間はいざ事故を起こしてしまうとパニックに陥ってしまうものです。
事前に事故対応マニュアルを作成しておき、事故発生時にすぐ参照できるよう社用車に常備しておきましょう。
事故発生の報告を受けた管理者も落ち着いた対応が求められます。
保険会社への連絡など交通事故に付随する事務手続きは事後対応で構いません。現場の一時対応は当事者に任せ、業務への影響を最小限に抑えるようオペレーションの復旧に注力しましょう。
企業は社内規定で事故の賠償金を従業員に請求する決まりを設けてはなりません。
これは労働基準法16条における「賠償予定の禁止」に基づきます。賠償予定の禁止とは、労働契約の破棄に伴う違約金の請求や、企業に損害を与えた場合の賠償金支払いの約束を禁ずるものです。
ただし、あくまで具体的な金額や賠償の割合を規定してはいけないという内容ですので、従業員に対する賠償請求自体を禁止するものではありません。
事故発生後、必要に応じて従業員に賠償金や修理費用を請求することもできます。
なお、保険に加入している限り社用車の事故で自己負担が発生するケースは非常に稀です。社用車を運用する際は適切な保険に加入することも検討しましょう。
従業員の権利は法令によって守られており、原則として事故を理由に従業員を解雇することはできません。
ただし、再三の注意・指導にも関わらず事故を繰り返す従業員や、飲酒運転など悪質な過失で事故を起こした従業員に対しては懲戒解雇が認められる可能性もあります。
また、業務上の損害に対して必要以上に重いペナルティを科すことも事故の隠蔽につながるため好ましくありません。
社用車による事故を防ぎたいのであれば、ペナルティを科すのではなく安全運転の意識向上のための教育を実施すべきです。
交通事故はいつ、どこで発生するか予測がつきません。
適切な対応ができなければ自社にとって不利な賠償責任を負わされる可能性もあります。
何より自社の従業員やお相手の命を危機にさらしてしまうこともあるかもしれません。事前に事故対応マニュアルを作成し、万が一の事故に備えておきましょう。
無事故無違反のドライバーがやっている事をまとめた記事があります。
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